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代表弁護士 小川敦也

裁判例1:東日本センターに移収された場合の訴えの利益

平成21年 3月25日

東京地裁

平成20年(行ウ)第695号

 東京入管収容場に収容中に仮放免を許可しない処分がされ,その後に被収容者が東日本センターに移収された場合でも,仮に,取消判決によって,仮放免を許可しない処分が取り消されれば,その判決の拘束力により,東京入管主任審査官は,被収容者を東京入管収容場に再移収した上で,仮放免を許可する処分をすることができる(行政事件訴訟法33条1項)と解されるので,原告が東日本センターに移収中であることをもって,本件不許可処分の取消しの訴えが訴えの利益を欠くものとはいえない。 

裁判例2:仮放免期間延長請求不許可処分の取消訴訟の提起後に仮放免の許可がなされた場合の右取消訴訟の訴えの利益の有無

昭和52年11月11日

神戸地裁

昭和51年(行ウ)第19号

二 被告が原告に対し、原告が令二四条四号ロに該当するとして昭和四一年二月一五日付退去強制令書を発付したところ、原告が同五一年六月二一日右退去強制令書発付処分の無効確認を求める訴訟(当庁同五一年(行ウ)第一六号)を提起し、現に当庁に係属中であること、同時に、原告が同訴訟事件を本案とする右処分の執行の停止を求める申立(当庁同年(行ク)第九号)をなしたこと、被告が原告に対し、同四九年一二月一二日令五四条により仮放免の許可をなし、その後一か月ないし一〇日間の期間を定めていわゆる仮放免期間延長を認めてきたこと、原告が同五一年七月二一日前記行政処分執行停止申立事件において当庁により前記強制退去令書の送還部分の執行停止決定がなされたことを理由にいわゆる仮放免期間延長請求をしたところ、被告が同日付をもつてこれを不許可とし、同日、原告を神戸入管に収容したこと、その後原告は横浜入国者収容所に移されて収容されていたが、原告の左股関節の悪化により手術を要する状態となつたため、同所所長が原告に対し、同五二年三月二六日、(1)許可後速やかに神戸大学医学部付属病院において手術をすること、(2)収入を得る活動に従事しないこと、の二つの条件を付して仮放免を許可し、現在原告が仮放免中であることの各事実は当事者間に争いがない。

 してみると、本訴は、被告が昭和五一年七月二一日付でした原告のいわゆる仮放免期間延長請求(仮放免の請求)に対する不許可処分の取消を求めるものであるところ、被告が昭和五二年三月二六日原告の仮放免を許可したことによつて、被告の右不許可処分は、現在その効果がなくなつたというべきであるから、原告がその後においてもなお右不許可処分を取消すことによつて、原告がその処分によつて侵害された権利ないし法律上の利益の回復を求め得るのでないかぎり、本訴は訴の利益を欠くものというべきである。

 ところで原告は、前記昭和五二年三月二六日の仮放免許可について、(1)許可後すみやかに神戸大学医学部付属病院において手術するため入院すること、(2)収入を得る活動に従事しないこと、という二つの条件が付せられているために、現在神戸大学医学部付属病院に入院中であるが、将来同病院を退院した際に再度収容される可能性が十分に存するし、また、家族の生活を維持するための収入活動ができなくなり生存権が侵害され、右条件に違反して収入活動に従事すれば収容されるという不利益を受ける虞れがあるので、本訴において同五一年七月二一日付の仮放免不許可処分を取消して、被告において継続して仮放免すべき義務の存在が確認されるのでなければ,原告の不利益は救済されないから、原告は仮放免中といえども本訴において訴の利益を有すると主張する。

 しかしながら、本訴は、原告のいわゆる仮放免期間延長の請求に対する被告の昭和五一年七月二一日付の不許可処分の取消を求めるものであるから、本訴が認容されて原告勝訴の判決が確定した場合、前記原告のいわゆる仮放免期間延長請求に対する被告の不許可処分は、違法として遡及的に効力を失い、当初から処分そのものがなかつたのと同様の状態が現出するにすぎないものであつて、原告のいわゆる仮放免期間延長請求がなされた状態となるにとどまるものである。したがつて、被告は右勝訴判決の趣旨にしたがい改めて請求に対する処分をしなければならないが、被告が原告に対して無条件の仮放免の許可をしなければならないものではなく、もとより、右勝訴判決によつて当然に仮放免の期間延長の効力が発生するわけでもなければ、まして無条件に被告が原告に対して今後継続して仮放免すべき義務を負うことが確認されるわけでもないのである。そして、前記昭和五二年三月二六日の仮放免許可の際の前記条件からすれば、将来原告が神戸大学医学部付属病院を退院し病状が回復すれば、再度収容されるという事態が生じることは十分考えられるし、また、条件に違反して収入活動に従事すれば再度収容されるという不利益を受ける虞れもあり得るわけであるが、本訴において原告の請求が認容され、昭和五一年七月二一日付の仮放免不許可処分が違法なものとして取消されたとしても、そもそも仮放免はその時々の原告の置かれた状況、諸般の事情を考慮してなされるものである以上、将来状況が変われば、その時点において仮放免不許可処分が適法になされることは当然あり得ることであつて、将来における仮放免不許可処分は、本訴における昭和五一年七月二一日付の不許可処分とは実質的にも形式的にも何らの関係もない全く別個独立の処分であり本訴に勝訴しても、その判決の効力とか拘束力が将来における仮放免不許可処分に及ばないのはいうまでもない。そもそも将来における仮放免不許可処分は、その発生自体が不確定的なものである。原告が主張するように、再度の仮放免不許可処分による収容の虞れの存在をもつて訴の利益(予防的利益)を存するということはできない。もし将来原告主張のような再度の仮放免不許可処分がなされた場合には、その取消を求める訴訟を提起することのほうが、より直截的で有効な救済手段であるというべきである。 

以上のとおり、原告の主張はいずれの点からみても失当であつて、本訴においては、原告が既に仮放免が許可された後においても、なお被告のなした昭和五一年七月二一日付の仮放免不許可処分を取消すのでなければ回復されない権利ないし法律上の利益が原告にあるものとは認められないから、原告の本訴請求は訴の利益を欠くというべきである。


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