お問い合わせ

東京都墨田区太平4-9-3

第2大正ビル

アライアンス法律事務所

TEL03-5819-0055

代表弁護士 小川敦也

逃亡し,又は仮放免に付す条件に違反するおそれ:裁判例1

平成24年 2月 3日

東京地裁

平成23年(行ウ)第357号 ×

(1)原告は,本件不許可処分の取消しを求める理由として,妻のC14が歩行不自由であり,糖尿病等の疾患もあることから,1人では生活困難で,原告の協力が必要不可欠であること,本邦で長期間平穏に生活していたことなどから,逃亡のおそれはなく,憲法24条及びB規約23条並びに人道上の観点からも,原告の仮放免を許可すべきことが「出入国の公平な管理」という入管法の目的に合致していたのであるから,本件不許可処分は違憲違法であると主張している。

 しかしながら,そもそも原告は,不法入国者であり,原告に対する本件退令発付処分が適法であることは前回訴訟で確定しているのであるから,当然に退去強制されるべき者であって,身柄を確保して速やかに送還されるべき状況にある。そして,退去強制手続における収容の目的として,退去強制令書の発付を受けた者の本邦内での活動を制限するという目的もあることからすれば,仮に逃亡のおそれがないとしても,直ちに仮放免を認めるべきであるとはいえない。

 また,C14が歩行不自由で糖尿病等の疾患のため1人では生活困難であることを認めるに足りる客観的な証拠はなく,むしろ,C14の病状に係る診断書(甲3)によれば,C14は高血圧症及び糖尿病で治療中であるものの,薬物治療で血圧値は安定しており,糖尿病についても食事療法と薬物治療により良好なコントロールがされ,業務には支障ない状態であることが認められるのであるから,C14が1人では生活困難であって,原告の協力が必要不可欠であるとは認められない。そして,証拠(乙1ないし5)によれば,そもそも原告とC14との婚姻は真摯な婚姻意思に基づくものとは認められないのであって,C14が実質を伴う配偶者であることを前提とする憲法24条やB規約23条,人道上の配慮の観点からの原告の主張はそもそもその前提を欠き,採用することができない。

 なお,仮に原告が主張するように原告とC14との間の婚姻関係が実質を伴うものであったとしても,原告の身柄が拘束されることにより,その婚姻生活に支障が生じることは,原告が本邦から退去を強制される地位にあることによる必然的な制約であるといわざるを得ず,仮放免制度の趣旨に照らして,そのような支障があることのみをもって,本件不許可処分における東京入管主任審査官の判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえない。

(2)原告は,逃亡のおそれがなく,証拠を隠匿又は変造することもあり得ず,C14の夫として病気治療が必要なC14の生活を支えるべき義務があるのだから,本件不許可処分は,正当な理由のない身体活動の自由に対する拘束であり,憲法13条,18条に違反する自由権の侵害であるとも主張する。

 しかしながら,前記の退去強制手続における収容の目的に照らせば,逃亡のおそれや前回訴訟の証拠の隠匿又は変造の余地がないからといって,直ちに仮放免を認めるべきであるということはできないことはもとより,前記のとおり,原告とC14との婚姻関係は形式的なものにすぎない上,C14が1人で生活することが困難であるとも認められない。そして,原告の収容は,退去強制手続における収容を原則とする入管法の規定により正当な理由に基づいてされているのであって,何ら憲法13条,18条に違反するものではないから,原告の主張は採用することができない。

裁判例2:退去強制令書の送還部分の執行が停止されている場合と出入国管理令52条5項の適用の有無

昭和51年9月27日

東京地裁

昭和50年(行ウ)第159号 ×

 ところで令第五四条に規定する仮放免の制度は、右の原則に対する例外的措置として、自費出国又はその準備のため若しくは病気治療のため等身柄を収容するとかえつて円滑な送還の執行が期待できない場合、その他人道的配慮を要する場合等特段の事情がある場合に一定の条件を付したうえで一時的に身柄の解放を認める制度と解すべきである。・・・ 

・・・原告は、本件処分は裁量権を著しく逸脱ないし濫用した違法な処分であると主張する。
 原告がその主張に係る刑事事件について東京地方裁判所で判決を受けたこと、その間仮放免を受けていたことがあること、昭和四九年四月昭和薬科大学に入学したことは、当事者間に争いがない。

 しかしながら、本件口頭弁論の全趣旨によれば原告がかつて仮放免を受けたのは刑事裁判の進行との関連であることがうかがわれるところ、前記仮放免制度の趣旨にかんがみると、大学に在学中である場合、逃亡の虞のない場合常に仮放免を許すべきものと解しなければならぬいわれはない。

 また、〈証拠略〉によれば、原告は本件仮放免許可の申請理由として身体衰弱し収容に耐えないことを挙げており、原告本人尋間の結果によれば、原告は胃の具合が悪く大村入国者収容所入所直後医師の診察を一回受け、一週間薬を服用したことがうかがわれるけれども、右供述によれば、その後診察を受けたことも薬を服用したこともないことが認められるから、収容に耐えない状態ではないことが明らかである。また仮放免は刑事訴訟法の定める保釈とはその趣旨を異にするから、刑事訴訟法との対比において本件処分を非難することも当たらない。

 したがつて、本件処分は、なんら裁量権を逸脱ないし濫用したものとはいえない。


概要 | プライバシーポリシー | サイトマップ
入管専門弁護士が、オーバーステイ(不法滞在)となった外国人の方へ、在留特別許可・仮放免・出国命令等、入管制度に関する情報をお教えいたします。