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アライアンス法律事務所

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代表弁護士 小川敦也

ケース1

平成25年 1月 23日

東京地裁

平成23年(行ウ)第650号 ×

(1)原告の在留状況について

ア(ア)前提事実及び後掲の証拠によれば,〔1〕原告は,平成10年1月22日,在留資格を「研修」とする上陸許可を受けて本邦に上陸し,埼玉県久喜市に所在する太平電業株式会社(以下「太平電業」という。)において配管加工の研修を受け,月額7万円程度の収入を得ていたところ,平成11年1月には,太平電業の契約社員として雇用され,同社の神奈川県川崎市内の工場で勤務を開始するとともに,在留資格を「特定活動」とする在留資格の変更を受けたこと(ただし,同年11月頃には,兵庫県姫路市内にある太平電業の工場に異動した。甲16,乙3,6,8),〔2〕原告は,平成12年9月頃,太平電業の工場から逃亡し,同年12月頃からは友人を頼って埼玉県川口市内に住むようになり,様々な就労先を転々とした後,平成17年頃からは有限会社大成興業(以下「大成興業」という。)で解体工事の業務に従事して就労をし,月額約25万円の収入を得ていたこと(甲16,21,乙3,6,8,原告本人),〔3〕原告は,上記〔2〕のように就労を継続するため,在留期間の更新又は在留資格の変更を受けることなく,最後に更新を受けた在留期間の末日である平成13年1月22日を超えて本邦に残留し,本件裁決までの不法残留期間は10年を超えていること,〔4〕原告は,フィリピンにいる家族に対し,毎月3万ないし10万円を送金していたこと(乙8)が認められる。

(イ)我が国は,外国人の在留について,外国人が在留中に従事する活動又は在留中の活動の基礎となる身分若しくは地位に着目して類型化した在留資格を定め,在留資格として定められた活動又は身分若しくは地位を有するものとしての活動を行おうとする場合に限り,それぞれの在留資格に応じて定められた在留期間の範囲内において在留を認めるものとし,かつ,一定の在留資格をもって在留する者以外には,本邦において報酬を受ける活動をすることを原則として許容せず,これを許容した者についても,それぞれの在留資格に応じて定められた活動のみを許すという制度を採用しているものであり(入管法2条の2,19条並びに別表第1及び第2,出入国管理及び難民認定法施行規則3条及び別表第2参照),前記(ア)〔2〕~〔4〕のような原告の行動は,原告の主張する動機をしんしゃくしたとしても,我が国の出入国管理秩序と相いれない悪質なものというほかない

イ 原告は,前記ア(ア)に述べたとおり,太平電業から逃亡した後,前提事実(2)エのとおり平成23年2月に居住地を埼玉県川口市ε内とする居住地変更の登録をするまでの間は,埼玉県川口市内にある友人の家や大成興業の従業員寮のほか,遅くとも平成21年3月以降は,本件住居に居住していたものであるところ(甲16,乙3,5,6,8,原告本人),証拠(乙1)によれば,これらの居住地に係る居住地変更の登録の申請をしていないことが認められる。このような居住地変更の登録の申請を怠る原告の行動は,本邦に在留する外国人の居住関係及び身分関係を明確ならしめ,もって在留外国人の公正な管理に資することを目的とする外登法の趣旨に反する行為であり,同法18条の2第2号の罰則規定にも該当するものである。

ウ 以上述べたところからすれば,原告の在留状況は,悪質であるとの評価を免れない。

 なお,原告は,本邦に在留中に一度も反社会的と評価され得る行為をしていない(入管法及び外登法違反以外の犯罪行為はしていない旨をいうものと解される。)などとも主張するが,本邦に在留している以上,いわば当然のことにすぎないのであって,東京入国管理局長において,原告の在留を特別に許可するか否かを判断するに当たり,殊更重視すべき事情であったとはいえないというべきである

ケース2

平成25年 6月 27日

名古屋地裁

平成25年(行コ)第19号 〇

  控訴人は,「文化活動」の在留資格で本邦に入国し,4回の更新を経て,平成16年8月10日,出国準備のための在留資格変更許可を得たにもかかわらず,その在留期限である同月26日以降も本邦から帰国せず,名古屋入管係官による摘発を受けた平成22年3月16日まで,不法に残留を継続したものである。また,この間,平成12年頃から約1年間及び摘発直前の平成22年3月初めころから摘発まで,報酬を伴う不法就労を行っていたもので,在留特別許可の判断に当たり,これらが消極要素となることは否定できない。

 もっとも,控訴人は,名古屋入管係官から,従来の「文化活動」の在留資格による在留更新は与えられないから,出国準備のための上記在留資格変更申請をするようにとの指導を受けた時点においても,全く文化活動を行っていなかったわけではなく,生け花の講座を1週間に4回程度,真面目に受講

していたことは前記認定事実(補正後)のとおりであり,名古屋入管係官の上記指導は,この程度の活動では在留の「主たる目的」が文化活動に当たらないとの判断に基づくものであったこと,そもそも,在留特別許可の制度は,適法な在留資格を有しない外国人を対象とするものであること,不法就労の点についても,証拠上明らかなその期間は,十数年に及ぶ滞在期間と比べれば短期間にすぎないこと,就労の内容・態様も,犯罪的であったり社会通念上不相当なものではなく,対価も多額ではなかったこと,最初の約1年間の就労は,アルバイト程度ならかまわないであろうとの軽い気持から行ったものであり,摘発時の就労も,病気治療等によって負担を掛けている長兄の負担を軽くしようとの意図に出たものであること(しかも,給料の支給は受けていない。),以上の事情を勘案すれば,本件では,上記不法滞在,不法就

労が明らかな消極要素であるなどと過大視することは相当でない。


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