お問い合わせ

東京都墨田区太平4-9-3

第2大正ビル

アライアンス法律事務所

TEL03-5819-0055

代表弁護士 小川敦也

在留特別許可に係るガイドライン

在留特別許可の許否の判断に当たっては,個々の事案ごとに,在留を希望する理由,家族状況,素行,内外の諸情勢,人道的な配慮の必要性,更には我が国における不法滞在者に与える影響等,諸般の事情を総合的に勘案して行うこととされています。「在留特別許可に係るガイドライン」は、許否の判断にあたり考慮すべき事項を積極要素、消極要素に分けて規定しています。

そこで、このガイドラインが、法務大臣等の裁量権を拘束するものであるのかが問題となります。しかし、裁判例の多くは、「在留特別許可の許否の判断に当たって考慮すべき当該外国人の個別的事情につき,積極要素と消極要素とに分けて類型的に分類し,在留特別許可方向で検討する例,退去方向で検討する例を一般的抽象的に例示しているにとどまるものであって,このガイドラインが法務大臣等の裁量権を制約したり,裁量権の限界を画したものではない」と判断するにとどまっています。

法務大臣の裁量とガイドラインに関する裁判例1

平成24年 9月25日

東京地裁

平成23年(行ウ)第761号 ×

 なお,法務省入国管理局は,「在留特別許可に係るガイドライン」を公表しているが,これは,法務大臣等が在留特別許可の許否の判断について広範な裁量権を有していることを前提とした上で,在留特別許可の許否の判断に当たって考慮すべき当該外国人の個別的事情につき,積極要素と消極要素とに分けて類型的に分類し,在留特別許可方向で検討する例,退去方向で検討する例を一般的抽象的に例示しているにとどまるものであって,このガイドラインが法務大臣等の裁量権を制約したり,裁量権の限界を画したものではないことはいうまでもないところである。

法務大臣の裁量とガイドラインに関する裁判例2

平成25年 1月31日

東京地裁

平成23年(行ウ)第759号 ×

イ 本件ガイドライン及び比例原則との関係

  原告P1は,原告P1が原告P2や原告P3を養育していることや原告P1の日本における定着性及び原告らが帰国した場合の原告P2や原告P3への影響は在留特別許可の判断に当たり当然に重視すべきであるが,本件裁決及び本件退令処分は,これを重視せず,原告P1に対する有罪判決の存在や入国及び在留の経緯を過度に重視しており,本件ガイドラインに反し,比例原則に反するものであると主張する。

  しかしながら,本件ガイドラインは,法務大臣等が在留特別許可の許否の判断について広範な裁量権を有していることを前提としたものであり,その内容は,在留特別許可の許否の判断に当たって考慮すべき当該外国人の個別的事情につき,積極要素と消極要素に分けて類型的に分類し,在留特別許可方向で検討する例,退去方向で検討する例を一般的抽象的に例示しているにとどまり、積極要素とされた事情が認められる場合に,必ず在留特別許可を付与すべきことを定めた基準でないことは明らかであり,一方,在留特別許可は諸般の事情を総合的に考慮した上で裁量的判断に基づき個別的に決定されるものであるから,仮に本件ガイドラインの積極要素に該当する事実が認められたとしても,そのことをもって,在留特別許可を付与しなかった法務大臣等の判断が,直ちに裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たるということはできない。

  そして,在留特別許可をすべきか否かの判断が,法務大臣等の広範な裁量に委ねられており,在留特別許可を付与するか否かについて法務大臣等の判断が違法とされるのは,その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるなど,法務大臣等が裁量権の範囲を逸脱又は濫用した場合に限られると解すべきであることは前記(1)イで説示したとおりであり,本件裁決や本件退令処分の有効性がいわゆる比例原則に従い判断されるものともいえないし,原告P1の主張する事情を考慮してもなお本件裁決が裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとはいえないことは前記(2)で説示したとおりである。 

ウ 平等原則との関係

  原告P1は,本件裁決及び本件退令処分が平等原則に反すると主張する。

  しかしながら,在留特別許可は,その付与の許否に係る法務大臣等の広範な裁量権を前提として,諸般の事情を総合的に考慮した上で個別的に決定されるべき措置であり,その許否に係る判断を拘束する行政先例又は一義的基準は存在しない。したがって,在留特別許可を付与された他の事例と特定の要素に着目して形式的に比較することによって,当然に本件裁決や本件退令処分が平等原則に違反するとはいえない。


概要 | プライバシーポリシー | サイトマップ
入管専門弁護士が、オーバーステイ(不法滞在)となった外国人の方へ、在留特別許可・仮放免・出国命令等、入管制度に関する情報をお教えいたします。