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代表弁護士 小川敦也

被収容者の家族状況について述べた判例:裁判例1

平成24年 2月 3日

東京地裁

平成23年(行ウ)第357号 ×

(1)原告は,本件不許可処分の取消しを求める理由として,妻のC14が歩行不自由であり,糖尿病等の疾患もあることから,1人では生活困難で,原告の協力が必要不可欠であること,本邦で長期間平穏に生活していたことなどから,逃亡のおそれはなく,憲法24条及びB規約23条並びに人道上の観点からも,原告の仮放免を許可すべきことが「出入国の公平な管理」という入管法の目的に合致していたのであるから,本件不許可処分は違憲違法であると主張している。

 しかしながら,そもそも原告は,不法入国者であり,原告に対する本件退令発付処分が適法であることは前回訴訟で確定しているのであるから,当然に退去強制されるべき者であって,身柄を確保して速やかに送還されるべき状況にある。そして,退去強制手続における収容の目的として,退去強制令書の発付を受けた者の本邦内での活動を制限するという目的もあることからすれば,仮に逃亡のおそれがないとしても,直ちに仮放免を認めるべきであるとはいえない。

 また,C14が歩行不自由で糖尿病等の疾患のため1人では生活困難であることを認めるに足りる客観的な証拠はなく,むしろ,C14の病状に係る診断書(甲3)によれば,C14は高血圧症及び糖尿病で治療中であるものの,薬物治療で血圧値は安定しており,糖尿病についても食事療法と薬物治療により良好なコントロールがされ,業務には支障ない状態であることが認められるのであるから,C14が1人では生活困難であって,原告の協力が必要不可欠であるとは認められない。そして,証拠(乙1ないし5)によれば,そもそも原告とC14との婚姻は真摯な婚姻意思に基づくものとは認められないのであって,C14が実質を伴う配偶者であることを前提とする憲法24条やB規約23条,人道上の配慮の観点からの原告の主張はそもそもその前提を欠き,採用することができない。

 なお,仮に原告が主張するように原告とC14との間の婚姻関係が実質を伴うものであったとしても,原告の身柄が拘束されることにより,その婚姻生活に支障が生じることは,原告が本邦から退去を強制される地位にあることによる必然的な制約であるといわざるを得ず,仮放免制度の趣旨に照らして,そのような支障があることのみをもって,本件不許可処分における東京入管主任審査官の判断が社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかであるとはいえない。

(2)原告は,逃亡のおそれがなく,証拠を隠匿又は変造することもあり得ず,C14の夫として病気治療が必要なC14の生活を支えるべき義務があるのだから,本件不許可処分は,正当な理由のない身体活動の自由に対する拘束であり,憲法13条,18条に違反する自由権の侵害であるとも主張する。

 しかしながら,前記の退去強制手続における収容の目的に照らせば,逃亡のおそれや前回訴訟の証拠の隠匿又は変造の余地がないからといって,直ちに仮放免を認めるべきであるということはできないことはもとより,前記のとおり,原告とC14との婚姻関係は形式的なものにすぎない上,C14が1人で生活することが困難であるとも認められない。そして,原告の収容は,退去強制手続における収容を原則とする入管法の規定により正当な理由に基づいてされているのであって,何ら憲法13条,18条に違反するものではないから,原告の主張は採用することができない。

不法滞在者の婚姻関係と仮放免:裁判例2

平成21年 5月22日

東京地裁

平成21年(行ウ)第10号 ×

  仮放免制度は,前記(1)の身柄収容の原則に対する例外的措置として,自費出国若しくはその準備のため又は病気治療のためなど,容疑者の身柄の収容を続けるとかえってその円滑な送還の執行を期待することができない場合や、その他人道的配慮を要する場合等特段の事情が存する場合に,一定の条件を付した上で一時的に身柄の解放を認める制度であると解することができる。そして,同条の規定が,前記のような考慮事項を定めるのみで,それ以上に具体的な判断基準等を定めていないことを考慮すると,仮放免の請求に対する許否の判断は,主任審査官等の広範な裁量にゆだねられていると解するのが相当である。

 したがって,仮放免の請求に対する許否についての主任審査官等の判断が違法とされるのは,主任審査官等がその裁量権の範囲を逸脱し,又は濫用した場合に限られるというべきである。 

2 本件処分に係る東京入管主任審査官の判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるといえるか否か

(1)原告は,東京入管主任審査官による裁量権の範囲の逸脱又は濫用を基礎付ける事実として,原告の本邦における平穏な生活及びAとの婚姻関係,さらにはAにおいて相当額の保証金を納付すること及び原告に仮放免の条件を遵守させることが可能であることを主張するようであるが,前記1で述べた仮放免制度の趣旨からすると,原告主張に係る上記各事実は,退去強制令書の発付を受けて収容されている者である原告に係る仮放免を許可すべき根拠とはそもそもなり難いものというべきである。

 そして,そのほか,本件全証拠によっても,原告について,自費出国若しくはその準備のため又は病気治療のためなど,身柄の収容を続けるとかえって円滑な送還の執行を期待することができないとか,その他人道的配慮を要する等の特段の事情があると認めることはできない(かえって,乙4及び9からは,原告の健康状態には問題がないことがうかがわれるところである。)。

(2)したがって,本件処分に係る東京入管主任審査官の判断に,裁量権の範囲の逸脱又は濫用があるということはできないから,本件処分は適法である。

退令処分後の婚姻:裁判例3

平成21年 3月25日

東京地裁

平成20年(行ウ)第695号

 そこで,上記ウの判断の枠組みを前提として,原告の仮放免を許可しないとした本件不許可処分における主任審査官の判断が,その裁量権の範囲を逸脱し又は濫用するものといえるか否かについて,以下検討するに,原告は,本件不許可処分には,原告とAが平成20年10月21日との間の婚姻関係を十分に考慮していない違法があると主張する。

 しかしながら,〔1〕前記1及び2のとおり,原告が退去強制対象者であり,既に口頭審理の請求を放棄し,それが有効であること,〔2〕本件退令処分の執行による原告の収容期間は,本件不許可処分の当時,いまだ約1か月であり,合理的な期間の範囲内にとどまること,〔3〕原告の健康状態について収容に耐えられない病気等の存在をうかがわせる証拠はないこと(なお,乙3によれば,本件違反調査の際,原告は,○○のため台湾の薬を所持しているが,服用しなくても日常生活に問題はないと供述している。),〔4〕本件摘発時には原告とAは住居を異にしており,婚姻届の提出も本件退令処分後であるところ,収容期間中に家族の交流が一定の制約を受けるとしても,合理的期間の範囲内にとどまる限り,それは収容に伴い通常生ずる範囲内の不利益といわざるを得ず,また,収容中であっても,家族との面会は保安上等の支障がなければ許可され,通信文の発受等も保安上の支障がない限り認められていること(被収容者処遇規則34条1項,37条)等の諸事情を総合考慮すれば,前記前提事実(3)カないしクのとおり原告が本件退令処分後に仮放免の許可申請までにAとの婚姻届を提出したことを斟酌しても,本件不許可処分に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があると認めることはできない。

 したがって,本件不許可処分は,適法というべきである。


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